2024年6月 六月大歌舞伎昼の部を観て来ました! あらすじと感想まとめ

2024年6月の歌舞伎座は、中村時蔵家の3世代襲名と中村獅童家の子供達が初舞台ということで、それを祝う雰囲気に溢れた歌舞伎座でした。

昼の部は片岡仁左衛門さんが珍しく女方を勤められ劇中での披露口上を、夜の部では尾上菊五郎さんが披露役を勤められて豪華な襲名披露となりました。

六月大歌舞伎の昼の部を観て来ましたので、感想などまとめておきます。

上州土産百両首

こんなお話

幼馴染の正太郎(中村獅童)と牙次郎(尾上菊之助)は偶然の再会を喜びあうものの、共にすりを稼業としていて、互いの財布を抜き取ってしまいます。

牙次郎はピュアで正直なイイ奴だけれど間が抜けていてドジなところがあり、正太郎が目をかけている弟分。

二人は堅気になり、真面目に生きることを誓い合い、浅草の聖天様の森で、10年後に再会する約束を交わします。

すりの兄貴分金的の与一(中村錦之助)、弟分みぐるみ三次(中村隼人)に堅気になることを告げますが、快く送り出す与一に対し三次はそれが許せないというような怖い表情でふてくされ、別れの水杯も拒否!

堅気になった正太郎は上州(群馬県)で板前としてまじめに働き、腕のいい板前として評価も高く、その店の娘との結婚も控えていて、貯金できた200両を持って牙次郎との再会の日を楽しみにしています。

そこへ、偶然お客としてやってきた与一と三次と正太郎。

それをきっかけに、三次から強請られることとなり、

一方牙次郎も、岡っ引きとして働いてはいるものの、不器用な性格のため成果を上げられないまま仲間からもいじめられ、、、

そして浅草の聖天様で再開する夜、

感想

先ずもって、憎めないドジキャラの牙次郎は見た目もパッとしなくて、もさーっとした感じのいでたちでセリフももっさりしている。

この牙次郎を演じる尾上菊之助さんが、え?まさか?って感じです。

普段の男前でカッコいい、女方でも美しい菊之助さんがもの凄いキャラ変で、先月の政岡からの振れ幅たるや、この2ヶ月で見方が変わりました。

そして、悪役の三次、この辺の素直になれないままワルを貫いてしまう青年のぞくぞくするような色気と危うさがもうたまらない感じの隼人さん、この間のお稽古の賜物かと

金的の与一の錦之助さんは渋いワル親分というあまり観たことのないお役でしたが、男前親子共演の空間に流れる与一の心地よいセリフを堪能しました。

で、正太郎の獅童さんがキャラクターにピッタリで、三次にとっても牙次郎にとってもいい兄貴なんだなぁと感じました。

結局、強請りに来た三次を殺めてしまったことで、お尋ね者となった正太郎と手柄のない牙次郎が聖天様で再会し、御用提灯が並ぶわけですが、親方に「自首させてやってくれ」と願い出る牙次郎・・・

無言の親分歌六さんのその佇まいが風格ありすぎて、

ふたりには幸せになっていて欲しい。

義経千本桜 所作事 時鳥花有里

こんなお話

兄の源頼朝から謀反の疑いをかけられて都落ちする源義経とそれに同情する家臣の鷲尾三郎、

道中で出会った白拍子と傀儡師が実は神様の使いで、

旅の慰めにと芸を披露しつつもご神託を与えるというという舞踊の演目です。

感想

鷲尾三郎の染五郎がかっこいい、所作もきっぱりしていて美しい!

白拍子たち(孝太郎、児太郎、米吉、左近)と傀儡師(種之助)がせり上がって来るところはワクワクしました。

そして、傀儡師種吉の種之助が達者!

3つのお面で義経、弁慶、静を踊り分けるのだけど、

よくもまぁあんなに器用にお面を取り換えられるものだと感心した。

調べてみたら今回は義経を勤められた又五郎さんも傀儡師をやってらっしゃるようで、やっぱ受け継がれているんだなぁと、

妹背山婦女庭訓 三笠山御殿  

こんなお話

謀反を企て権力をかさに着る蘇我入鹿とそれを何とか阻止したいのが藤原鎌足、

物語の舞台は蘇我入鹿の三笠山御殿、そこに入鹿の妹橘姫が戻ってきます。

さらに、苧環(おだまき)をもって赤い糸を手繰り寄せてやって来るのが恋人の烏帽子折求女、烏帽子を作る職人に身をやつしていますが、実は藤原淡海という藤原鎌足の息子で、入鹿を討ちたいと考えています。

橘姫と求女は御殿の中へ消えてゆきますが、そこにやって来るのが杉酒屋の娘のお三輪。

求女を一付に愛する田舎の純朴な娘です。

苧環の白い糸が求女に結ばれていると信じてここまで来たのに、糸が切れて愛しの君がどこに行ったか分からなくなってしまったと嘆いているところに通りかかるのが豆腐買いのおむら

おむらさんに行き先を尋ねると、橘姫と求女の結婚式が行われるとのことで、さらに御殿の中へ突き進むお三輪。

行く手を阻むのが御殿の官女達にさんざんに翻弄された挙句、お祝いの様子が聞こえてきてさらに嫉妬の炎が燃え上がり、「疑着の相」のお三輪、

漁師鱶七が現れ、お三輪を刺してしまう。

漁師鱶七は蘇我入鹿を討とうとする藤原側の使者の金輪五郎今国であり、入鹿を討つためには「疑着の形相」の娘の生き血が必要だと、

お前の生き血が愛しの求女=藤原淡海の役に立つのだよと言われながら死んでゆくお三輪

※「疑着の相」:嫉妬に狂った女の凄まじい悪相

感想

幕開けで出てくる中村七之助さんの橘姫が美しくて、振る舞いもきれいでお姫様感が溢れていて、そこに黒い衣装の中村萬壽さんの求女が麗しいの美男子。

中村時蔵さんのお三輪ちゃんが苧環の糸が切れてどこに行ったか分からないと嘆く気持ちも解る。

だけど、両方にいい顔している男でもある。

探しあぐねたお三輪ちゃんが「知らないか」と尋ねる豆腐買いのおむらさんが片岡仁左衛門さんで連れている娘おひろが中村梅枝さん、

仁左衛門さんの女方はなかなか見られないうえに、ここで狂言半ばの襲名披露ご挨拶となる。

女方の拵えで、素の仁左衛門さんが見え隠れして楽しいひと時。

そして仁左様のおむらは兄の秀太郎さん風味でした( *´艸`)

梅枝さんのご挨拶もしっかりしていて良き良き。

おむらさんから求女と橘姫の祝言の情報を聞きつけたお三輪ちゃんはさらに御殿へ、

そこで行く手を阻むのが官女達。

作法を教えると言いながら若い田舎娘をいびり倒すのが、隼人、種之助、萬太郎、歌昇、獅童、    錦之助、又五郎、歌六さんの8人官女。

普段は立役の人が官女の姿となってお三輪ちゃんを弄んで、せっかく結ってもらった髪もぐずぐずになるし、足元もふらついてかわいそう過ぎる。

8人官女は全員小川家の人々で、時蔵さんの襲名をお祝いするノリでほほえましくいじってる感じがしたので、楽しく観ておりましたが、そんな時にもお三輪ちゃんであり続ける時蔵さんはさすがですね。

そしていよいよ、にぎやかな祝言の様子が聞こえてきて嫉妬の炎に燃えまくるお三輪、疑着の相という嫉妬に狂う女の怒りの形相はさっきまでの女の子ではなくて、鬼となった女の顔に代わっていく様子。

凄かった。

そして最後、大詰めのシーンで鱶七に刺され、自分の生き血が最愛の求女の役に立つことを知り死んでいくお三輪は、かわいい女の子に戻って「最後にもう一度お顔が見たい」「来世は添いたい、恋しい」(大意)と息絶えるのですが、

哀れで、悲しい、、、

尾上松緑さんの鱶七がお三輪ちゃんに、おまえの死が愛する求女の役に立つこと、大きな手柄をもたらすことを伝えるシーンはお三輪に対してはなんの感情移入もなく淡々としているのセリフがクールで、ずっと松緑さんの声を聞いていたかった。

鱶七には、お三輪ちゃんのことをちゃんと求女に伝えてあげて欲しいと、心から願いました。

たぶん、入鹿を倒す大望の前には乙女の心なんてどうでもいいんだろうな。

まとめ

六月大歌舞伎を観劇しましたので、あらすじと感想をまとめてみました。

最後までお読み下さりありがとうございました。

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