2024年2月4日、東京の新橋演舞場で初日を迎えたスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」2月は中村隼人さん、市川團子さんが交互にヤマトタケル役を勤めます。
また物語のヒロイン、兄橘姫と弟橘姫を一人二役で中村米吉さんが演じ、主人公の若返りに伴って脇を固める俳優も若返りフレッシュな配役となっています。
スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」は2月の新橋演舞場を皮切りに、名古屋、大阪、福岡と主要都市を巡ります。スーパー歌舞伎の特徴や見どころをまとめました。
スーパー歌舞伎ってどんな歌舞伎？
スーパー歌舞伎は、踊りや立ち回り、見得（役者の決めポーズ）、ケレン（観客の意表を突くような演出）、隈取り、下座音楽などの古典歌舞伎の演出方法のいいところを積極的に継承しつつ、Story、Speed、Spectacle（ストーリー、スピード、スペクタクル）の「3S」の要素を重視し、現代人の胸を打つ物語、テンポとメリハリ、視覚的な見せ方で楽しませる全く新しい歌舞伎です。
テンポよくわかりやすくて、エンターテインメント性に溢れる歌舞伎を今から38年前の1986年に三代目市川猿之助が創り上げたのです。
そしてスーパー歌舞伎として最初に世に送り出されたのが『ヤマトタケル』というわけです。
ヤマトタケルは誰が作ったの？
『ヤマトタケル』の原作は哲学者の梅原猛さんです。
古典歌舞伎にないような、エンターテインメント性を備えた新しい歌舞伎を作りたいと考えていた三代目市川猿之助さんが、梅原猛さんに持ち掛けて、
日本神話の日本武尊（ヤマトタケル）伝説を元に梅原猛さんが原作を書き下ろし、三代目市川猿之助さんが脚本と演出を手掛け、スーパー歌舞伎の初演が実現しました。
ヤマトタケルの初演はいつ？
スーパー歌舞伎が最初に上演されたのが1986年2月4日、新橋演舞場で初日の幕が上がりました。
新橋演舞場での2月3月のロングラン公演を皮切りに、中日劇場、京都南座と地方会場でも上演され、同じ年の10月11月には再び新橋演舞場でロングラン公演が行われるほど、大人気公演となったのです。
実は、私はこの時の南座でのスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』を観ているのです。「なんだかすごい歌舞伎があるらしいから観に行こう」という友人の誘いに乗せられて、「まだ見ぬ凄いバンドが来日するなら観ておこう」くらいの気持ちで南座に行きました。
高校時代に学校から観劇に連れていかれた歌舞伎の公演とは全く違う物、凄いものを観たという感覚がありました。
その後、スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』は何度も上演され、
市川猿之助門下のお弟子さん、市川右近（現市川右團次）さんと市川段治郎（現喜多村緑郎）さんのダブルキャストでヤマトタケルを勤めて上演されたり、
四代目市川猿之助さんがヤマトタケルを勤めさらに進化させたり、
様々に形を変えつつ芯になるテーマは受け継がれながら、2024年の上演に繋がりました。
ヤマトタケルができたきっかけは？
「古事記」を題材に哲学者梅原猛が描き下ろし、日本神話のヤマトタケルの波乱に満ちた反省と伝説を大胆な構想のもと、独創的なドラマとして書き上げられました。
昭和六十一年二月四日に新橋演舞場で初公演され大きな反響を呼び、スーパー歌舞伎を演劇界の新たなジャンルに打ち立てた歴史的な作品です。
これまで数々の再演、練り直しての上演が行われてきましたが、今回は初演に立ち返り、壮大なストーリーを丹念に書き出しています。
中村隼人と市川團子が小碓命後にヤマトタケルと大碓命、中村米吉が兄橘姫、弟橘姫を演じるなど、清新なスーパー歌舞伎となっています。
2024年スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』の見どころは？
スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』の見どころと言えば、当にスーパー歌舞伎の3要素の「3S」を堪能できるところです。
Story、Speed、Spectacle（ストーリー、スピード、スペクタクル）の「3S」です。
ヤマトタケルは「古事記」や「日本書紀」に登場する大昔の英雄で、大和朝廷の時代に日本列島を統一するために、父親の命じるままに西へ東へと赴き、戦をした皇子です。
時には西国の熊襲を、東国の蝦夷を打ち、旅の途中で愛する弟橘姫を失い、ヤマトタケル自身も大和へ帰る途中で力尽き、白鳥になって天に帰ったという伝説が元になっています。
そこに、3人の女性、兄橘姫、弟橘姫、みやず姫との恋愛が絡みます。
さらに、父親に認められたいがために望まぬ戦いに身を投じる自身への葛藤
昔の物語ですが、セリフは現代語であり、音楽も洋楽的なアプローチですので状況や心情が入ってきやすいのではないかなと思います。
そして、スケールの大きな戦いのシーンや、効果的に使われるライティングなど歌舞伎の良さと現代劇の良さを掛け合わせライブ感あふれる壮大な作品となっています。
まとめ
2024年に、東京、名古屋、大阪、福岡で上演されるスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』についてまとめました。
予備知識なしに観劇しても十分楽しめるお芝居です。
初舞台でヤマトタケルの忘れ形見ワカタケルを演じた市川團子さんが12年の時を経て、ヤマトタケル役に挑むというのが既にスペクタクル！
父が演じたヤマトタケル役を息子の中村隼人さんが演じるというのも歌舞伎ならではの縁です。
是非お楽しみいただけたらと思います。
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