初めて歌舞伎を観る場合どんな作品から観ればいいのか迷いますね。
たまたまテレビで見た俳優さんがかっこよくてその人の芝居を観てみたいとか、日本人に生まれたからには一度は歌舞伎を観たいとか、初めて歌舞伎を観に行くきっかけは様々です。
初めて歌舞伎を観る方の演目選びの助けとなるように、演目選びについてまとめてみたいと思います。
歌舞伎の始まりはいつ?
歌舞伎は、江戸時代初期に京都で始まりました。
その始まりは、1603年に出雲の阿国という女性が始めた「かぶき踊り」と言われています。かぶき踊りは、当時流行していた奇抜な格好をした「かぶき者」の扮装やしぐさを取り入れた、歌や踊り、寸劇を組み合わせた芸能でした。
かぶき踊りは、江戸にも伝わり、人気を博しました。
しかし、風紀の乱れを理由に、1629年には女歌舞伎、1652年には若衆歌舞伎が禁止されてしまいます。その結果、男性役者による「野郎歌舞伎」が主流となり、今に繋がる歌舞伎の形に変化してきたのです。
歌舞伎の演目は大きく分けて4種類
歌舞伎の演目は大きく分けて4種類です。
その4種類をまず押さえてみましょう。
歌舞伎の種類その1 時代物
「時代物」の歌舞伎は江戸時代の主な観客である町人にとって、遠く離れた時代や、
武士や公家の世界を題材にした演目のことです。江戸時代の社会に起きた出来事や、江戸時代よりも古い時代の出来事などを描く作品を指します。
また、幕府によって、禁令のおかげで、江戸時代に起こった事件や人物を、より古い時代や別の名前に置き換えて扱った作品もあります。
また、必ずしも史実に忠実ではなく、伝説や歴史を題材に作者の創意工夫でアレンジされているのが通例です。
人形浄瑠璃で評判になった演目を歌舞伎に取り入れるケースも多く、物語の進行の中で重要な役割を担う音楽の名前をとって「義太夫狂言」とも呼ばれています。
代表作には、
『仮名手本忠臣蔵』(かなでほんちゅうしんぐら)
『菅原伝授手習鑑』(すがわらでんじゅてならいかがみ)
『義経千本桜』(よしつねせんぼんざくら)
等があります。
当時の言葉が使われていたりするので、セリフがわかりにくかったり格式張っていてピンとこないことも多いのですが、時代物が楽しめるようになるとさらに歌舞伎の世界が広がります。
歌舞伎の種類その2 世話物
江戸時代の町人の暮らしや風俗を背景とした出来事を題材とする演目のことを世話物と言います。
江戸時代の人にとっては、現代劇、ドラマのようなもので、恋愛、殺人、心中などが描かれる世話物のお芝居は、当時のトレンディドラマと言えますね。
髪型、衣服、言葉遣いなど、まるで江戸の庶民生活が目の前に広がっているかのような芝居が繰り広げられますので、初めての方でも入って行きやすいのではないでしょうか?
代表作には
『曾根崎心中』(そねざきしんじゅう)
『東海道四谷怪談』(とうかいどうよつやかいだん)
『桜姫東文章』(さくらひめあずまぶんしょう)
『与話情浮名横櫛』(よわなさけうきなのよこぐし)
などがあります。
なんとなく聞いたことのある題名じゃありませんか?
セリフもぐっとわかりやすくなるので、親しみやすい作品が多いと思います。
歌舞伎の種類その3 松羽目物
松羽目とは、能舞台をなぞらえた舞台装置のことを言い、能や狂言を歌舞伎に取り入れた演目を松羽目物(まつばめもの)といいます。
舞台の真ん中に大きな松の木が描かれ、舞台下手にはカラフルな五色の揚幕が設えてありそこから演者が出入りするような舞台装置をご覧になったことがあるかと思います。
明治時代に、能や狂言が醸し出す高尚な雰囲気をとり入れ、格式高い作品を目指して多くの「松羽目物」が生まれました。
代表作には
『土蜘蛛』(つちぐも)
『船弁慶』(ふなべんけい)
『身替座禅』(みがわりざぜん)
『棒しばり』(ぼうしばり)
等があります。
意外に愉快な演目も多いので、解りやすく楽しめると思います。
歌舞伎の種類その4 所作事
舞踊や舞踊劇のことを所作事(しょさごと)と言います。
元々踊りから発祥した歌舞伎では、舞踊そのものとして作られた作品や、ある演目のなかの舞踊の部分だけが取り上げられて、単独の作品として演じられることが多くあります。
伴奏音楽も、義太夫、常磐津、清元、長唄等々多種多様に発展しました。
代表作には
『京鹿子娘道成寺』(きょうがのこむすめどうじょうじ)
『藤娘』(ふじむすめ)
『春興鏡獅子』(しゅんきょうかがみじし)
『連獅子』(れんじし)
等があります。
これまで書いてきた4つの種類に加えてもうひとつの種類があります。
新歌舞伎、新作歌舞伎
明治時代の後期から昭和初期に書かれたものを新歌舞伎といい、第二次世界大戦以降に書かれたものを新作歌舞伎と言います。
セリフが現代の言葉になり、ストーリーもわかりやすくなります。
代表的な作品には
『松浦の太鼓』(まつうらのたいこ)
『一本刀土俵入』(いっぽんがたなどひょういり)
『元禄忠臣蔵』(げんろくちゅうしんぐら)
などがありますが、この先どんどん増えていくのがこの種類です。
『ファイナルファンタジーX』
『刀剣乱舞』(とうけんらんぶ)
『流白浪燦星』(るぱんさんせい)
『風の谷のナウシカ』
『荒川十太夫』(あらかわじゅうだゆう)
なども新作歌舞伎のひとつです。
さらに「スーパー歌舞伎」や「超歌舞伎」「歌舞伎NEXT」などもあります。
歌舞伎初心者におすすめの演目は?
歌舞伎を観に行く場合、特に東京の歌舞伎座、大阪の松竹座、京都の南座、博多の博多座など、いくつかの演目が用意されていて、1枚のチケットで何演目か見ることができるので、先ず観てみることです。
歌舞伎を初めて観る人が、よし「勧進帳」を観ようとか「春興鏡獅子」を観に行こうとはならないのが普通じゃないかと思います。
ある演目だけを目当てに行くというよりは、劇場で約半日過ごしてみて、劇場の雰囲気、お芝居、食事やおやつ、お土産などフルコースで楽しんでいただくことをお勧めします。
テレビで見たあの人がかっこいいから観てみたい、雑誌でみたあの人が素敵だからとかそんなきっかけが多いのじゃないかと思います。
また、好きなゲームが原作だから、好きな漫画やアニメが原作だからというのもきっかけのひとつだと思いますので、
気になる役者で選ぶ、好きな原作で選ぶとこから入れば良いのじゃないかと思います。
敢えて演目でいうとすれば、
イケメンが江戸の吉原で大暴れする「助六由縁江戸桜」
このセリフは耳にしたことがあるかも知れない「白浪五人男」
顔にあばたのある田舎商人が吉原の花魁に恋をする「籠釣瓶花街酔醒」
ヤマトタケル伝説が歌舞伎になった「スーパー歌舞伎ヤマトタケル」
などが歌舞伎としての華やかさと物語のわかりやすさを兼ね備えていて楽しめるのではないでしょうか?
まとめ
初めて歌舞伎を観る方に向けて、演目の種類と選び方、おすすめをまとめました。時代物、世話物、所作事、松羽目物、新作歌舞伎と種類はありますが、タイトルでピンときた演目や、役者のお好みで選んでいいのです。歌舞伎は大衆娯楽ですので、先ずは観ることを体験してみていただけたらと思います。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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